次世代の電子・光機能材料の設計戦略を考えた場合、ナノ領域のサイズを厳密に制御することが可能で、且つ化学構造により様々な光・電子機能を任意に付与することのできる精密合成高分子は究極の機能材料の一つとみなすことができます。近年、我々はリビングラジカル重合法の一種であるRAFT重合が電子・光機能性部位を有する高分子構造体を精密に構築する手法として非常に有用であることを見出してきました。
例えば、ポリチオフェン骨格を有する新規ナノ構造体の構築を目指し、架橋部位を有するビニルチオフェン誘導体のRAFT重合により両親媒性ブロック共重合体を合成し、その自己組織化並びにチオフェン含有セグメントの臭素部位へのカップリング反応によりポリチオフェン部位をコアに有する可溶性コア-シェル型微粒子の合成に成功しております。本手法の特徴として、自己組織化に用いるブロック共重合体の化学構造・組成によりシェル部位の厚みと絶縁特性・粒子サイズ・分散性や環境応答性が、カップリング反応を用いたコア架橋反応によりコア部位の化学構造やドナー/アクセプターの組み合わせを自由に設計でき、微粒子全体としての半導体特性や光学特性を任意に制御できる点が挙げられます。この特徴を利用して様々な色を示しセンシング材料として利用可能な刺激応答性ナノ粒子の開発や有機メモリーデバイス等への展開を行っています。 近年のリビングラジカル重合の発展に伴い、様々な金属と錯体形成する金属錯体ポリマーの精密合成に関する研究が広がりを見せています。我々も、金属錯体形成能をもつチアゾール含有ブロック共重合体の自己組織化と部位選択的錯体形成能を利用した光機能性材料を開発してきました。一方で、チアゾール環の高い分子屈折に由来する高透明性・高屈折率材料やエン・チオール反応を利用した光ナノインプリントによる高屈折率材料の微細加工技術を開発してきました。このように精密に合成された高分子を用いたナノ構造の構築技術を自在に操り、新物性に基づく機能性ナノ材料を創製することが出来れば、次世代型電子・光機能性材料の創出が期待できます。