たんぱく質やDNA などのようにナノレベルで分子が組織的に集合し形成しているナノ組織体は究極の高機能性材料といえます。本研究ではアミノ酸の特異な機能と組織化に着目し、アミノ酸系ポリマーの精密合成、ナノ構造体の構築、及び分子デバイスへの応用を展開しています。特に、高分子弱電解質や温度応答性といった機能を有する光学活性ポリマーの精密合成やアミノ酸系ブロック共重合体の合成と組織化に関する研究を推進しています。

 具体的には、フェニルアラニン(Phe)、アラニン(Ala)、プロリン(Pro)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、トリプトファン(Trp)、トレオニン(Thr) 部位等を有するモノマー類のRAFT重合により、温度度応答性ポリマー、pH-応答性ポリマー、多重刺激(pH、温度、塩、尿素)応答性ポリマーを開発してきました。また各種アミノ酸部位を精密に合成された高分子鎖中にブロック的に配列させる事で、多重刺激応答性及びその高次構造の動的変換を実現してきました。これらの研究により、RAFT系リビングラジカル重合によりアミノ酸含有高分子の一次構造を、複数の非共有結合を有するアミノ酸モチーフの利用により二次構造を、そしてブロック共重合体等の自己組織化によりナノ構造体の階層構造を段階的に制御する技術を開拓してきました。

 一方で、特定物質の検出・取り込み・放出を任意に制御できるセンシング機能を持つブロック共重合体に着目し、環境水・飲料水中での高感度検出が望まれているフッ素イオンに対して特異的なセンシング機能を有するトリプトファン含有両親媒性ブロック共重合体も開発しました。また、ジペプチド部位の疎水性相互作用と水素結合によりチューブ状のナノ構造体を形成するジフェニルアラニン含有ポリマーの精密合成にも成功しています。近年、たんぱく質やDNAなどの生体分子と特異的相互作用を示すアミノ酸系高分子材料や新規双生イオン型ポリマーの開発も推進しています。これらの技術・知見を利用して、ナノファイバーやバイオ・センシング等の広範囲な分野に利用可能なアミノ酸系高分子材料・分子デバイスを創出したいと考えています。