不揮発性、難燃性、高イオン伝導性といった塩の特徴を有し、且つ環境に優しいイオン液体を用いた高分子合成に関する研究に取り組んでいます。特に、イオン液体の主な構成単位であるイミダゾリウム塩やその類似体であるトリアゾリウム塩部位を有する高分子の精密合成に関する研究を推進しています。

 具体的には、N-ビニルイミダゾリウム塩誘導体のRAFT重合によりイオン液体部位を一方のセグメントに有するブロック共重合体や星型ブロック共重合体の精密合成を達成しています。特に、温度応答性ポリマーとのブロック共重合体を合成し、刺激応答機能を有するイオン液体型ブロック共重合体の自己組織化と機能発現を実現しています。さらに、イミダゾリウム塩のアルキル部位の親水性や対アニオン等の内部構造、及び 温度、pH 、塩濃度等の外部環境変化による高次構造転移を利用した新規システムの構築にも取り組んでいます。一方、高イオン伝導性を示すトリアゾリウム塩に着目し、フィルム形成能に優れる高イオン伝導性ブロック共重合体やナノ粒子も開発しています。また、二酸化炭素の時間・空間・位置選択的な固定化・放出を積極的にナノ材料の設計に取り入れた新規二酸化炭素応答性ナノ構造体の創製を目指した研究も行っています。

 近年、新しいイオン性物質群として期待されている深共晶溶媒(DES:Deep Eutectic Solvent)やディ―プ共融混合体型モノマー(DEM: Deep Eutectic Monomer)を用いた新規高分子材料の創製に関する研究も展開しています。ハロゲン塩などの水素結合アクセプターと水素結合ドナーから成るDESは無限の多様性と未知なる機能性を秘めており、本研究を推進させリビングラジカル重合や高分子ナノ構造体・ハイブリッドと融合させることにより基本骨格としてのディ―プ共融混合体の有用性・可能性を追求することを目指しています。